FAB(Frontal Assessment Battery ) 前頭葉機能評価バッテリーのやり方

勉強

FAB(Frontal Assessment Battery:前頭葉機能評価バッテリー)は、前頭葉機能を評価するための簡便なテストで、6つのタスクを行います。前頭葉は主に実行機能(計画、問題解決、抽象的思考、行動の抑制など)を司っており、FABはその機能に関連する能力を測定します。以下は、FABを実施する際の手順と評価方法です。

FABの構成と実施方法

FABは6つのサブテストで構成されており、各項目は最大3点で採点されます。合計点は18点満点です。

1. 類似性(概念化)

  目的: 抽象的な思考を評価します。

  方法: 被験者に対して、2つの単語(物体や概念)を提示し、これらの類似点を答えさせます。   

  評価:(練習)これから二つの物の名前を言います。その二つの似ているところを答えてください。例えば・・・「バットとグローブ」、「バットとグローブと聞いてどちらも何のスポーツに使いますか?

  では本番です。

①「バナナとオレンジ」・・・答えが出なければ「バナナとオレンジはどちらも・・」と誘導する     →答え:果物・フルーツ  (誤答例はジュース、黄色、柔らかい、野菜、酸っぱい)

②「机と椅子」・・②からは誘導なし →答え:家具 (誤答例:勉強、学校、一対になっている、座る)

③では次は3つになります「チューリップ、バラ、ヒナギク」・・・                 →答え:花  (誤答例:ヒナギクなんて知らない、トゲ、春)

採点:①から③まで正答数で点数

2. 語の流暢性(言語流暢性)

 目的: 自発的な言語生成能力を評価します。

方法: 被験者に1分間でできるだけ多くの単語を言わせます。

評価:「か・き・く・け・こ」の「か」で始まる言葉、単語をできるだけたくさん言ってください

「か」で始まる言葉でしたら食べ物でも動物でも物の名前でも良いです。ただし、人の名前や固有名詞はNGです。

採点:10語以上3点、6語以上2点、3語以上1点、2語以下0点

3. 運動行為のプログラミング(プランニング)

  • 目的: 運動行動の計画と実行能力を評価します。
  • 方法: 被験者に手のジェスチャーを指定された順番で3つ繰り返して行うように指示します。
  • 教示:これから手を使った動きをお見せします。まずは見ていてください(この時見ながら手を動かす被験者がいたら止めるよう再度指示を出します)
    • 検者自身の右手を、手のひらを上にして机の上に置き、
    • (1)自分の左手をグーにして、自分の右手のひらをたたく
    • (2)次にその左手をパーにして(手刀で)、自分の右手のひらをたたく
    • (3)最後に、左手をパーのままで、手のひら同士を合わせる(拍手)
    • 以上の連続動作を1組とし、それを3回くり返す。
    • では、今度は一緒にやってみましょう。鏡写しでやりたいので右手を動かしてください。一緒にやった後にはお一人でやっていただきます。
    • お手を拝借、せーの!(1)から(3)を3回繰り返しながら真似てもらう
    • では、忘れないうちに一人でやってみてください。
  • 評価:
    • ひとりで連続動作を6回以上できたとき 3点
    • ひとりで連続動作を3回以上できたとき 2点
    • 一人ではできないが検者と一緒なら連続動作を3回できたとき 1点
    • 一緒に動いている場面での失敗が見られる0点

4. 抑制行動の検査(反応抑制)

  • 目的: 自発的に行動を抑制する能力を評価します。
  • 方法:
  • 教示:では今度は私を掛け合いになります。この机を使います。私がこの机を叩きます。      叩くのは1回の時と、2回の時があります。私が叩く回数に応じて叩き返していただきたいのですが、そこにはルールがあります。私が1回叩いた時は、2回叩いてください。練習してみましょう。では、今度は私が2回叩いた時は、1回叩いてください。では練習してみましょう。それでは、私はこのルールで机を1回叩く時と2回叩くのを織り交ぜて行いますので、今練習したように返してください。
  • 評価:1-1-2-1-2-2-2-1-1-2 
  • 採点:
    • 失敗なし 3点
    • 失敗2回まで 2点
    • 失敗3回以上 1点
    • 検者と同じ回数叩いてしまうことが続けて4回以上ある 0点
    • 全くたたかない、全て1回(2回)叩く、ただ叩いている 0点

5. ゴーノーゴーテスト(Go/No-Goテスト:反応の選択と抑制)

  • 目的: 行動の抑制と反応選択を評価します。
  • 方法:
  • 教示:ルール変更です。今度は私が1回叩いた時は1回叩いてください。では練習してみましょう。次に私が2回叩いた時です。私が2回叩いた時は叩かないでください。では練習してみましょう。 ではこのルールで私は1回叩く時と2回叩くのを織り交ぜます。先ほどの新しいルールで返してください。
  • 評価:1-1-2-1-2-2-2-1-1-2
  • 採点:失敗なし 3点 
  • 失敗2回まで 2点
  • 失敗3回以上 1点
  • 検者と同じ回数叩いてしまうことが続けて4回以上ある 0点
  • 全くたたかない、全て1回(2回)叩く、ただ叩いている 0点

6. 環境自発性の検査(自己生成行動)

  • 目的: 自発的な行動の生成能力を評価します。
  • 方法:                                            指示①:「手のひらを上にして、両手を机の上にのせてください」
  • 指示②:「私の手を握らないでください」
  • 検者は、目をあわせず何も言わずに、自分の両手を被験者の手のそばによせ、手のひらを合わせるようにそっとつけ、手を握らないでじっとしていられるか1~2秒間観察する。
  • もし握ってしまった場合には、「私の手を握らないでください」と、もう一度言ってから、同じ動作をくり返す。
  • 採点:
    • 被験者が検者の手を握らなかった場合 3点
    • 被験者が躊躇して、どうしたらよいのか聞いた場合 2点
    • 被験者が躊躇せずに検者の手を握った場合 1点
    • 注意されたあとにも検者の手を握った場合 0点

FABのスコアと解釈

  • 合計スコアは18点満点です。
  • 15〜18点: 前頭葉機能は正常範囲内。
  • 12〜14点: 軽度の前頭葉機能障害の可能性。
  • 11点以下: 明らかな前頭葉機能障害の可能性。

FABは簡便で短時間(約10分程度)で実施でき、認知症、特に前頭葉型認知症のスクリーニングに有用です。当院では、他の検査と一緒にやることで全体像を捉えるために必須です。

他の検査の紹介はまた次に

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