作業療法士(OT、Occupational Therapist)は、さまざまな分野や施設で働き、身体的・精神的な健康や日常生活の質を向上させるためのリハビリテーションを提供します。今回は、主な作業療法士が活躍する分野や施設の紹介です。
1. 身体障害分野
• 身体的な障害や外傷、疾患に対するリハビリを行います。脳卒中後の麻痺や、外傷後の運動機能回復などが対象です。
• 例: 運動機能の再訓練、日常生活動作の訓練(食事、着替え、入浴など)
2. 精神障害分野
• 精神疾患を持つ方への支援を行います。認知機能や感情的な側面の改善を目指し、日常生活や社会参加をサポートします。
• 例: うつ病、統合失調症、発達障害の方に対する社会的スキル訓練や活動支援
3. 発達障害分野
• 発達障害を持つ子供に対する早期介入や支援を行います。感覚統合療法や学習支援、日常生活スキルの向上を目指します。最近では放課後デイでの不器用なお子さんのサポートをするOTもいます。
例: 自閉症スペクトラム、ADHDの子供に対する感覚刺激訓練や社会的適応訓練
4. 老年期リハビリ分野
• 高齢者の身体的・精神的な健康維持や、認知症などに対する介護予防の支援を行います。日常生活動作の自立をサポートし、生活の質を向上させます。
例: 認知機能低下への対応や転倒予防プログラム
5. 職業リハビリ分野
• 障害者や長期休業後の労働者が職場に復帰するための支援を行います。職場環境の調整や適切な作業方法の指導を含みます。
例: 職場復帰プログラムの作成や作業環境の改善提案
6.がんのリハビリ分野
・身体的、精神的、社会的、スピリチュアル的に苦痛を伴う状況に対して介入と支援をします。これには小児、成人、高齢者といった世代、性差で発症する病気が違います。予防期、周術期、維持期、緩和期、終末期など時期に応じて対応するのですが、まだ歴史が浅い分野です。
例: 乳がん術後のリンパ浮腫対応、化学療法中の体力維持、小児の院内学級支援、術後の機能回復
作業療法士が働く施設
1. 病院・クリニック
• 総合病院やリハビリ専門病院、整形外科クリニックなどで、急性期から回復期、維持期まで幅広い患者に対応します。作業療法士が働く分野で一番多くを占めるため、この部分はまた今度詳細を紹介します。
2. 介護施設(特別養護老人ホーム、デイサービスなど)
• 高齢者が住み慣れた環境で自立した生活を送るための支援を提供します。施設利用者の機能訓練や介護予防プログラムを担当します。
3. 精神科病院・障害者支援施設
• 精神疾患を抱える方の回復や社会復帰を目指したリハビリを行います。地域での自立生活を支援する役割も担います。
4. 学校・教育機関
• 発達障害を持つ子供たちが日常生活や学習活動をスムーズに行えるようサポートします。特別支援学校や通級指導教室での支援が主です。
・作業療法士の養成校での教職員。専門学校は厚生労働省管轄、大学は文部科学省管轄なので、先生になるためにはちょっと差があります。共に作業療法士の国家資格を持っていることが最低条件。専門学校は経験年数5年以上という原則。大学職員になるためには今は修士、博士の学位がないとなかなかなれません。学位における分野は必ずしも作業療法でなくてもいい状況です。
5. 企業・職場リハビリセンター
• 企業内で障害者や復職者が働きやすい環境を整えたり、労働災害後の復職支援を行ったりします。
6. 訪問リハビリテーション
• 利用者の自宅を訪問し、日常生活に密着したリハビリテーションを提供します。家族への介護指導も含まれます。急激にニーズが高まり広がっている分野といえます。
7.起業と経営
・作業療法士として起業することはできません。我々は業務独占ですが、あくまで医師の指示のもとで行うことが定められています。この件は次回。
少子高齢化を迎えている日本では、さまざまなニーズがあります。
ちょっと特殊なケースとしては・・・刑務所
現在日本の刑務所に収容されている人はかなり高齢化となっていて、刑務作業に支障が出たり、持病や既往歴で体がうまく動かずに日常生活動作に支障が出ている受刑者もいます。そこに作業療法士が介入する余地があります。これはまだ狭い領域です。
これらの分野や施設において、作業療法士は個々の利用者のニーズに合わせた支援を提供し、自立した生活をサポートする重要な役割を果たしています。職域という言葉で表現しますが、ニーズがあるところに活躍の場があるとすれば、きっとまだまだ他に広がっていくことでしょう。要はアイデア次第でどうにでもなるってことで。