認知症高齢者の睡眠にはいくつか特徴があります。認知症が進行すると、脳の変性が睡眠をコントロールする部分に影響を与え、睡眠の質やリズムが崩れることがよくあります。以下は、認知症高齢者に一般的に見られる睡眠の問題や特徴です。
1. 昼夜逆転
認知症が進むと、概日リズム(体内時計)の崩れにより、夜中に目が覚めたり、昼間に過度に眠くなったりすることがあります。昼夜の区別がつきにくくなるため、昼間に眠り夜に目覚める、いわゆる「昼夜逆転」がよく見られます。
2. 頻繁な覚醒と浅い睡眠
深い睡眠(ノンレム睡眠)が減り、夜間に何度も目覚めることが多くなります。これにより、夜間の総睡眠時間が短くなり、十分な休息を取れないことが多いです。
3. 夜間の興奮や徘徊
認知症患者は夜間に興奮状態になったり、不安や混乱が増すことがあります。これにより徘徊や落ち着かない行動が現れることがあります。特に、夕方から夜にかけて症状が悪化する「夕暮れ症候群(サンドウィング)」という現象が見られることがあります。
4. 睡眠呼吸障害や不眠症
認知症患者は、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠呼吸障害を抱えることが多いです。また、不眠症も頻繁に報告されており、入眠や睡眠維持が困難になることがあります。
5. 昼寝の増加
夜の睡眠が浅くなることで、日中に眠気が強くなり、昼寝の頻度が増えることがあります。これがさらに昼夜逆転を助長する可能性があります。
6. サーカディアンリズム障害
サーカディアンリズム(体内の24時間周期のリズム)の乱れは、認知症患者に特に顕著で、外部の光や暗さに対する反応が変わり、リズムが狂うことで、夜に眠れない、昼に眠ってしまうといった現象が生じます。
これらの睡眠障害は、認知症の進行やその他の要因により個人差があるため、それぞれの患者に合わせた対応が必要です。また、環境の整備や薬物療法、非薬物療法(例:光療法やリラクゼーション)など、さまざまな介入が有効な場合があります。
普段学校や仕事で外出していると、夕食後に入浴して適度に疲労や体温の変化があるところに眠気が現れるのですが、高齢で日中デイサービスなどで入浴してしまうと夜に眠気を誘う方法が使えないですよね。そこでよく使用されているのが入眠導入剤。
入眠導入剤とは
入眠導入剤(にゅうみんどうにゅうざい)は、寝つきを助けるための薬のことです。特に、寝つきが悪い人や、不眠症を抱えている人が使うことが多いです。この薬は、脳や体の緊張を緩和してリラックスさせ、眠りに入りやすくする働きがあります。
主要な種類と特徴
入眠導入剤にはいくつかのタイプがあり、それぞれの作用の仕方や効果の持続時間が異なります。以下が主な種類です。
1. ベンゾジアゼピン系(BZD系)
古くから使われているタイプです。脳内のGABAという神経伝達物質の働きを強めて、脳の活動を抑えることで、リラックスを促し眠りにつきやすくします。代表的な薬には「レンドルミン」や「ハルシオン」などがあります。
• メリット: 強い鎮静作用があり、即効性があります。
• デメリット: 長期間使用すると依存症になるリスクがあります。また、翌朝の眠気やふらつきが問題になることもあります。
2. 非ベンゾジアゼピン系
BZD系に似た作用ですが、より選択的に作用するため、副作用が少ないとされています。代表的な薬には「マイスリー」や「ルネスタ」があります。
• メリット: 比較的依存性が低く、翌朝の眠気が少ないとされています。
• デメリット: それでも依存や耐性のリスクは完全に排除できません。
3. メラトニン受容体作動薬
「ロゼレム」など、体内の自然な睡眠ホルモンであるメラトニンに似た作用を持つ薬です。自然な眠りのリズムを調整する効果があります。
• メリット: 依存性がなく、自然な睡眠サイクルを整えることが期待できます。
• デメリット: 効果が出るまでに時間がかかる場合があり、即効性は低いです。
4. オレキシン受容体拮抗薬
「ベルソムラ」など、覚醒を促すオレキシンという物質の働きを抑えることで、眠りやすくします。
• メリット: 依存のリスクが少なく、比較的新しい薬です。
• デメリット: 効果が個人によって異なる場合があり、すぐに効果を感じないこともあります。
注意点
• 依存性: 一部の入眠導入剤は、長期間の使用によって依存性が生じる可能性があるため、短期間の使用が推奨されます。薬に頼りすぎないようにすることが重要です。
• 副作用: 翌朝の眠気やふらつき、記憶障害などの副作用が報告されることもあります。特に高齢者では、転倒のリスクが増える場合があります。
• 医師の指導のもと: 入眠導入剤は、自己判断で使用せず、必ず医師の指導に従って使用することが大切です。
まとめると、入眠導入剤は、適切に使用すれば寝つきを助けるのに非常に有効ですが、依存や副作用のリスクもあるため、慎重な管理が必要です。また、生活習慣の改善やリラックス法なども併用することで、薬に頼りすぎない睡眠改善が目指されます。