作業療法士養成過程での見学実習は、実際の臨床現場を知り、作業療法士の仕事を間近で観察する大切な経験です。見学実習は、治療の流れや職場の雰囲気、患者との接し方を学ぶ貴重な機会です。実習生としては、事前準備をしっかりと行い、実施中に観察ポイントを抑え、終了後のレポートで適切にまとめることが重要です。
見学実習は、1〜2年生の間に1〜2週間かけておこなわれます。主な実習内容は、仕事の様子や仕事場の見学などです。
見学実習や勤務職員とのコミュニケーションを通して、作業療法士としての所作・接遇を学びます。
見学実習は、初学年でおこなわれる場合が多く、学生にとっては初めての体験や経験も多いでしょう。
専門的な内容よりも作業療法士としての基本的な振る舞いや、人員配置、チーム構成などの基礎的な部分を学びます。
施設や病院など、作業療法士の実際の現場を見学しながら、働くイメージを具体的に把握します。早期から作業療法の現場を体験することで、専門職としての心構えやチームにおける役割などを学んでいきます。
1. 見学実習前の準備
① 基礎知識の復習
• 作業療法の基礎知識を復習しておくことが大切です。どのような手法がどのような患者に適用されるかなど、基本的な治療方法やアプローチの理論を再確認しましょう。現場では、教科書で学んだ知識がどのように実践されているかを見ることができるため、知識を準備しておくと理解が深まります。
② 見学先の情報収集
• 実習施設や担当者の専門分野について事前に調べましょう。例えば、施設がリハビリテーション病院なのか、老健施設なのか、または外来リハビリなのかによって、観察する内容が異なります。専門領域(脳血管障害、整形疾患、認知症など)に関する基礎知識も復習しておくと、観察がより有意義になります。最近は病院や施設にはホームページがありますから、あらかじめ病床数や診療科、施設の母体や規模などを調べておくことをお勧めします。可能であればリハビリテーション科のスタッフ数や入院部門、外来部門など配置について情報がなければ質問するのも良いと思います。
③ 実習の目標設定
• 自分が実習で何を学びたいのか、明確な目標を設定しておくと、見学中に重点を置くべきポイントが見えてきます。例えば、「患者の評価方法を学びたい」「作業療法士の患者とのコミュニケーションに注目したい」など、具体的な目標を設定しましょう。
④ 実習に必要なマナーを確認
• 実習の基本的なマナーを確認しましょう。遅刻しない、服装や身だしなみを整える、丁寧な言葉遣いを心がけるなど、プロフェッショナルな態度を取ることが大切です。見学先での振る舞いは、指導者やスタッフとの信頼関係に影響します。最近はユニフォームやメモ帳を忘れて実習先に来る学生が散見されます。忘れ物がないよう注意することで、社会人としての責任感を身につけて欲しいものです。
2. 見学実習中のポイント
① 観察の姿勢
• 積極的な観察が重要です。作業療法士がどのように患者を評価し、治療計画を立て、治療を実施しているかに注目しましょう。観察の際は次のポイントを意識すると良いでしょう:
• 患者さんの状態: 病状や障害の程度、治療や介入の目的を理解しようとする。
• 作業療法士の治療技術: どのような評価方法や治療技術を用いているかに注目する。
• コミュニケーション: 作業療法士がどのように患者さんやスタッフとコミュニケーションを取っているかに注意を払い、言葉遣いや患者さんのモチベーションを引き出す方法に注目する。
② 疑問点をメモする
• 見学中に生じた疑問点や気づきはその場でメモを取っておきましょう。後で指導者やスタッフに質問する際に役立ちますし、実施後のレポートを書く際にも参考になります。
③ 患者さんのプライバシーを尊重
• 患者さんのプライバシーを尊重することが大切です。見学中に患者さんの個人情報を扱う場合もありますので、その取り扱いには細心の注意を払いましょう。また、患者さんに対して不適切な発言や行動をしないよう、見学者としての立場を自覚して行動しましょう。治療中の見学の際、立って(座って)見ている時の姿勢が態度として評価されています。「やる気」や「謙虚さ」などは実習生の立ち姿で患者さんにも伝わります。
3. 見学実習後のレポートの書き方と注意点
① 実習内容のまとめ
• 実習で見たことや学んだことを面倒くさがらずに具体的に書きましょう。特に、観察した作業療法士の行動や治療方法について、詳細に記述します。
• 実習中の体験: 具体的にどのような治療を見学したか、どのような手技や機器が使われていたかを書きます。
• 気づき: 自分が気づいた点や感想も加えます。例えば、作業療法士の患者への接し方が印象的だった部分や、治療中に工夫していたことなどに言及すると良いです。
② 学んだことの整理
• 実習を通じて学んだことを、教室での学びと照らし合わせながら整理しましょう。見学中に学んだ新しい知識や、実際に見ることで理解が深まった理論などについて言及します。具体的な治療方法や患者の反応など、具体例を交えて書くことで説得力が増します。
③ 自己評価と今後の課題
• 自分の成長や今後の課題についても触れることが大切です。今回の実習を通じて何ができたか、何が足りなかったかを振り返り、今後どう学んでいくかを記述します。
• 例えば、「患者の評価方法についての理解が不十分だったため、今後は評価の手順についてさらに学びたい」など、今後の学びにどうつなげるかを具体的に示すと良いです。
④ レポートの構成と書式に注意
• レポートの構成が分かりやすく、論理的であることが重要です。見学実習の目標、実習内容、学んだこと、感想や考察という流れで構成し、適切な段落分けや見出しを使って整理しましょう。
• 文章は客観的かつ簡潔に書くように心がけ、個人的な感想や考えも含める際は、事実に基づいた記述にしましょう。これは次回に続きます。
⑤ 実習中の守秘義務の遵守
• レポートに書く内容は、患者の個人情報を特定できないように注意します。名前や詳細な病歴などは含めず、必要に応じて匿名化した表現を使用することが大切です。年齢は60歳代など概算表記とします。
発症日や受傷日をX年Y月Z日と記載し、現病歴は発症後◯日目、発症後◯ヶ月目と記載し、既往歴はX-1年とするなど直接年月日の記載は避けましょう。これも今後レポートの書き方をお知らせします。
まとめ
見学実習は、作業療法士としての基礎を築く重要なステップです。事前準備を怠らず、実習中に積極的に観察し、終了後はしっかりとレポートにまとめましょう。次回はレポートのポイントを検討します。