作業療法士という名前を看板に掲げて起業することが難しいとされる理由は、主に以下の法律や規制、業務の性質に関係しています。しかし、完全に起業が不可能というわけではなく、制約がある中でどのような形で起業できるかも合わせて説明します。
1. 医療・介護保険制度の制約
• 作業療法士が提供するリハビリテーションサービスの多くは、医療保険や介護保険に基づいて行われています。これらの保険が適用されるサービスは、原則として医療機関や介護施設などの指定を受けた施設で提供されなければなりません。そのため、個人で作業療法を提供する場合、保険適用のサービスとして提供することが難しいです。
• 例: 作業療法士が保険適用のリハビリサービスを提供するためには、病院やクリニック、介護施設などに所属する必要があります。
2. 業務独占資格
• 作業療法士は国家資格ですが、「業務独占資格」という性質を持っています。これは、作業療法士でなければ特定のリハビリテーション業務を行えないということですが、逆に言えば、作業療法士の業務は法律で規定された範囲内に限られることを意味します。このため、独立して幅広いサービスを提供することに制限があります。
3. 医師の指示の下での業務
• 日本の理学療法・作業療法士法によれば、作業療法士がリハビリテーションを行う際には、原則として医師の指示のもとで行う必要があります。これは、作業療法士が独立して診断や治療計画を立てることができないことを意味し、個人で開業して独自の判断で治療を提供することが難しい理由の一つです。
4. 責任とリスク管理
• 医療行為やリハビリテーションには、一定のリスクが伴います。特に身体に直接関わる作業療法は、その効果や安全性に関して慎重な判断が求められます。独立して開業する場合、医療事故や治療の結果に対する責任を個人で負う必要があり、このリスクを管理することが困難です。これが、医療施設内でのチーム医療の重要性が強調される理由です。
可能な起業の形態
上述の理由により、作業療法士が医療保険・介護保険を利用したリハビリテーションを独立して提供するのは難しいものの、いくつかの方法で起業が可能です。
1. 自由診療としてのリハビリサービス
• 保険適用外の自由診療として、個人や企業向けのリハビリテーションや健康増進サービスを提供することは可能です。いわゆる自費リハです。最近は街中でも看板を見ますし、動画配信でも宣伝を含んだ情報発信をしています。
他の業種と抱き合わせで作業療法の知識を用いることを看板に載せることはあります。
例えば、高齢者の介護予防や職場での健康支援、スポーツリハビリなどが考えられます。抱き合わせの場合は作業療法士の資格を持った福祉用具作成、作業療法士資格を持ったピラティス開業など。
2. 訪問リハビリやコンサルティング
• 作業療法士の知識を生かして、在宅リハビリの指導や家族への介護アドバイス、企業や自治体に対するリハビリや健康管理のコンサルティングを行うことは可能です。
3. 教育・トレーニングの提供
• 作業療法士としての専門知識を使い、セミナーやトレーニングプログラムを提供することも一つの起業の形態です。これにより、作業療法士のスキル向上や一般の人々の健康維持に貢献することができます。
4. オンラインプラットフォームの運営
• オンラインで健康やリハビリに関する情報提供を行ったり、自己管理型のトレーニングやケア方法を指導するサービスを提供することも、起業の一形態です。
まとめ
作業療法士が起業する際の最大のハードルは、保険制度や法的な制約、医師の指示の必要性です。しかし、自由診療やコンサルティング、教育分野であれば、作業療法士としての専門知識を活かし、リハビリや健康支援に関連するビジネスを展開することは可能です。