レーヴン色彩マトリックス検査(Raven’s Colored Progressive Matrices, RCPM)は、主に視覚的推理能力や抽象的な論理的思考力を測定するための非言語的な知能検査です。
言語能力に依存せず、図形やパターンの理解力を測定するため、言語に障害のある人や、文化的な背景が異なる人でも適用できる特徴があります。
そのため、失語の患者さん、認知症でも難聴の方でも状況把握ができれば絵を見て回答ができ、時には指差しで選択することで確認できます。
検査の特徴
• 対象年齢: 幼児から高齢者まで幅広く使えますが、特に認知機能の低下がある高齢者や発達障害のある子どもに適しています。適応範囲は45歳以上とされています。
• 形式: 被験者は、提示された一部が欠けた図形(マトリックス)を見て、その欠けている部分に入る図形を複数の選択肢から選びます。所要時間は10分から15分が一般的です。
• 言語に依存しない: 言語能力を問わないため、文化的・言語的な影響を受けにくい検査です。これにより、言語能力が低下した認知症患者や、失語症(言語に障害がある人)でも評価が可能です。
検査の目的
• 知的能力の評価: 言語に依存しないため、純粋な推理能力や視覚的問題解決能力を測定することができます。
• 認知機能の評価: 特に認知症や発達障害の疑いがある人に対して、視覚的・空間的な推論能力を評価することで、全体的な知的能力や認知機能の低下を確認します。
• 教育や臨床での使用: 学校や医療機関で、知的障害の有無や程度を評価するために使われます。
検査の構造
• 問題の構成: 図形が一部欠けたパターンが提示され、欠けている部分にどの図形が当てはまるかを選びます。問題は次第に難しくなり、パターン認識や推論能力を求められます。
• カラフルな図形: 図形やマトリックスは色彩豊かであるため、特に子どもや高齢者でも集中しやすいように工夫されています。
・セットA(setA) 連続した模様の同一性と変化について理解と回答
・セットAb(setAB) 全体の図の空間的に関連して構成している図の理解と回答
・セットB(setB) 空間的・論理的に関連している図の変化を予測し理解と回答
検査の概要
問題は12問が3セットで雑誌のような図案の冊子を用います。購入は評価バッテリーを多く取り扱う専門の業者さんからとなります。冊子と手引書、検査用紙合わせると30,000円くらいします。
図の欠如部分に合致する6つの選択図案の中から1つだけ選んでもらいます。
検査の手順
検査内容を理解していただくためにデモンストレーションと練習を経て進めていきます。
①導入:今から目で見て判断することを目的とした確認をしていきます。
②教示:机上で(セットA1問目のページを開き被検者の正面に配置したら、ページの上部にある長方形の標準図案を四角くなぞりながら)この四角の中には緑色が塗られていて、(模様部分を強調するように)縦・横の線がたくさんついています。(一部欠けている部分を指差し)ここは一部欠けています。この部分を埋めて図を元通りにしたいのですが、(6つの図形を指し示しながら)1から6番のうちどの模様、柄が入ると元通りになりますか?1つだけ決めてください。番号を言っていただいても良いですし、指差しでも構いません。
回答の仕方として、1から6の番号を言っていただくのはもちろん、図案の指差による単純な運動反応で回答していただきます。
レーブン色彩マトリックスの応用
1. 発達障害や知的障害の診断
• 言語やコミュニケーションに障害がある人でも、視覚的な問題解決能力を評価できるため、発達障害のスクリーニングとしても有用です。
2. 認知症のスクリーニング
• 認知症患者の視覚的な推理能力や問題解決能力を評価し、認知機能の低下度合いを確認する際に利用されます。
3. 文化的・言語的障壁の少ない評価
• 言語を使用しないため、異なる言語背景を持つ人や外国人でも公平に知的能力を評価できます。
最近では日本に住む外国人の方の認知機能検査をする場面が増えました。そんな時はかなり活躍しています。
まとめ
レーヴン色彩マトリックス検査は、視覚的推論力や抽象的な思考力を測定するための非言語的な知能検査で、特に文化や言語に依存しない公平な評価を提供します。教育現場や医療現場で幅広く利用され、認知症や発達障害、知的障害の診断にも役立っています。
検査での説明の仕方や工夫はまた今度